コロナ前から都内の講談教室で講談を習い始めていました。
趣味といえるものがなかったので、何かやろう→大声を出すのはストレス解消になる→手先不器用で芸術系は厳しい→日本の歴史や文化をおさらいできる=講談を習う!という適当な流れで始めてみたら結構面白いのです!
定年退職など環境の変化もあり一旦は辞めましたが、福岡でも神田紅先生の教室があり、再び習い始めて2年弱。2022年の7月初めて福岡で発表会に出ました。そして今回の2023年4月、福岡のホールで2回目の発表会。
演目はいつかやりたいと憧れていた「南部阪雪の別れ」です。
赤穂浪士討ち入りを前に大石内蔵助が南部坂に住む亡き浅野内匠頭の妻・瑶泉院を訪ねますが、仇討計画を知ろうとする瑶泉院に対し間者(スパイ)を警戒する内蔵助はとぼけて仇討の意思など全くないことを強調。すっかり怒った瑶泉院は内蔵助を悪し様に罵ってその場を去ります。真意を知りたがる戸田局にも本心を明かさず、袱紗に包んだ仇討連判状を託して去る内蔵助。
その後仇討のことを知って涙する瑶泉院は連判状に記載された討ち入りの義士の名前を読み上げるよう求め、戸田局が朗々と読み上げる。
この読み上げが聞かせどころなのですが、たとえば大石内蔵助ではなく大石内蔵助良雄(よしたか)吉田忠左衛門ではなく吉田忠左衛門兼亮(かねすけ)・・・これを47人分覚えなければならないので老化した頭には一苦労です。
先生からは「覚えたと思った後から100回練習するように」と言われました。
本番でふっと名前が出てこないアクシデントがよくあるとか。そうなると会場から拍手がもらえません。(拍手のためにやるという単純な承認要求…)
完璧に覚えるためには何度も記憶を上塗りして強化する事です。
南部坂の講談は20分以上かかる演目ですが、発表会は一人10分。
名前の読み上げにかかる時間を考慮して全体が10分で収まるようにアレンジします。言葉を変えたり短くしたり。同じ演目をやるにも切り取り方によって個性が出ます。
初めて聞く人に光景が思い描けるように表現を工夫しながら練習します。
家で聞いていた夫は「場所をわきまえず刃傷沙汰を起こす馬鹿な主人と部下の心情も理解できないさらに馬鹿な妻に従う大石内蔵助に心から同情する」などと言っていますが、軽く無視します。そして今月初めに上京した際は・・・
四十七士のお墓がある泉岳寺に立ち寄って、墓の前で一人一人にお線香をあげました。墓石に刻まれた名前を見ながら「発表会で無事にあなたの名前が言えますように」と心の中でお願いをしてきました。(そういう目的で泉岳寺に来る人はあまりいなかったような…)
発表会当日。仲間と一緒に舞台設置を手伝ったあと、着物に着替えて第二部に出演。先生に言われる通り100回練習したので、あまり緊張することはなく本番は最後まで乗り切り暖かい拍手をいただきました。
ところがところが!あとでVTRを見てみると、痛恨のミス。奥田貞右衛門行高の名前を「かねさだ」とうっかり間違って発音。本番の時も一瞬あっとは思ったのですが…ああああ。まだまだ修行が足りなかった!!!!
余談になりますが、泉岳寺には外国人観光客も大勢訪れていて、記念館では英語のビデオ紹介もありました。墓所の受付では線香代300円を払う払わないで揉めていましたので、おせっかいにも仲介。
しかし…イギリス人(と思われる観光客が)「私はキリスト教徒であって仏教徒ではないのでお墓の前ではお祈りができません」
・・・・・・そんな宗教的なことではないのだけれどなあ・・・・うまく伝える英語力が足りず私もやむなくその場を撤退。戦後GHQが講談を禁止したのは赤穂義士に代表される「仇討」「御恩と奉公」「武士の生きざま」「葉隠れ」などがテロリズムにつながるという警戒心があったといわれています。宗教や政治と切り離して日本人の心情や文化を理解してもらうのはなかなか難しいこともあるなと思ったきょうこのごろ。解決策としては外国人観光客には「お線香料」ではなく「入場料」と説明したほうが良いのかもしれません。
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