認知症について真面目に考えた

こんにちは!廣瀬祐子です。テレビ記者を38年やってました。

このところ人前で話をする機会が増え、自分が言いたいことではなく、人が訊きたいことを話すにはどうすればよいかを考えるようになりました。(考えてもなかなかうまくいきません)話がうまくなるには上手な人の話を聞くことだと悟り、講演会を聞きに出かけました。

認知症の講演を聞きに行く

先月は、九州市民大学の講座で、母親が認知症になった脳科学者・恩蔵絢子さんのご講演を聞きに行きました。私は若い頃から人に「え?わざとやってる?」と聞かれてもおかしくない失敗を散々やらかし、(私の失敗をMR.ビーンなら演技の参考にするとからかわれ…泣)間違いなく認知症になる!と怯えてきました。 落語や講談を退職後に始めたのも、覚えたものを人前で披露することが予防につながるはずと思ったからといっても過言ではありません。ところが…

脳科学者の恩蔵さんの母親は友人が多く性格も前向きで社交的。生徒にピアノを教えていました。指先を使い、料理も得意。家族にも恵まれている。そんな母親が65歳で認知症になるとは誰も思わず、娘の恩蔵さんもその事実を受け入れることが難しかったと語っています。脳に刺激を与えストレスもなさそうな人が認知症になるなら誰でも認知症になってしまうのでは?
私も今年で65歳。記憶が必要な落語と講談を習っているし、飲みに行く友人もいるし、日々料理もするしジムにも通う。脳に刺激を与えていれば認知症は予防できるというのは思い込みだったのか?

誰もがなる?認知症!

認知症発症のメカニズムは完全に解明されておらず(なんといっても複雑な脳ですから)ゆえに完全な予防も完全な治療も現在の医学では不可能なのだという。(損傷、死滅した細胞は元には戻らない)
恩蔵さんのお母様が罹患したアルツハイマー型認知症は、海馬が委縮し新しい記憶が定着しないことから始まります。一般的には脳内にアミロイドβというたんぱく質がごみのように溜まり脳の神経細胞を死滅させることで認知機能が失われていくのですが、なぜそうなるのかは原因が特定されていないということです。

恩蔵さんは、家族として認知症の母と向き合い日々の生活を共にしながら「科学者」の目で客観的に認知症を観察します。恩蔵さんの講演はその視点が新鮮で興味を惹かれました。認知症になって何を考えているのか、何を感じているのか外から見分けがつかなくなっても、感情だけはしっかり残っていることに彼女は気づきました。そして母親が気持ちのよい時は気持ちが良いように、気分が悪いときは気分が悪いと感じているのが彼女にもわかったのです。認知症になっても「その人自身が変わったのではない」ということに彼女はほっとしたと話していました。

人間の脳とパソコン

人間の脳はパソコンと比較されることがあります。パソコンの機能そのものが人間の脳を参考にして作られたと言われているほどです。記憶の中枢と言われる海馬は一時的な記憶を留める機能で、パソコンに例えるとメモリに近いと言われます。一方、短期の記憶でも繰り返されるうちに情報は海馬から大脳皮質に移り、長期記憶として定着します。パソコンに例えると大脳皮質はストレージ(長期記憶の貯蔵庫)のようなものです。私はこれまで脳の機能が低下、喪失してしまうと人間としての尊厳も失われてしまうのではと危惧していましたが、人間の脳には扁桃体という感情をつかさどる箇所があり、それは認知症になっても失われないのだと知りました。そもそもコンピューターには人間のような感情がありません。感情は生物特有のものなのですから。情報を引き出す機能がなくなるパソコンはパソコンとしての機能を失うでしょうが、感情のある人間はたとえ記憶がなくなっても人間なのです。

良い感情を大事に

恩蔵さんの話を聞いて私も思い出しました。知り合いの祖父が認知症になった時に、そのおじいちゃんは誰に何を言われても、いつもにこにこして「はい、そうですよ~~」と答えるので周囲から好かれているという話でした。認知症でも機嫌よく過ごすことができる人がいるのだとその時は驚きました。
厚生労働省によれば2024年の65歳以上の認知症患者数は443万人。2025年には5人に1人が認知症患者(軽度を含む)になるという推計もあります。超高齢化社会を迎えた日本で、誰もが認知症になる可能性を持っています。父はすでに他界、92歳の母も認知機能がしっかりしていて自活しているので、これまで漠然とした不安はありつつ認知症を強く意識することなく過ごしてきました。しかしこれからは自分自身を含めてどうなるかはまったくわかりません。どんな状態になろうと人間には感情が残っている限り、自分が幸せだと感じる心の持ちようを意識していきたいものだと心から思いました。認知症を考えることは自分のこれからの人生を考えることと同じなのかなと思います。恩蔵さんは本も出しているのでそれも読んでみようと思います。

脳科学者の母が、認知症になる

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日本テレビで記者職を34年。その後討論番組を担当し、今年1月に 定年退職しました。これまでの経験を生かして働く女性の悩みに答えて 少しでも助けになればと思っています。よろしくお願いします。